第4号(2012年7月15日)

「汝の良心に忠実なれ」―。1994年の春、京都市の京都国際交流会館に一枚の西陣織の壁掛けが贈られた。

織り込まれた鮮やかな刺繍に、京都大原・寂光院小松智光門主が「幽邃(ゆうすい)な大原の景観破壊は人間の良心の敗北です」と祈りを籠めた

▽大手広告代理店と地元の電鉄会社が大原一帯のディズニーランド化を構想。比叡山中に動物園を設け、延暦寺の横川中堂と三千院付近の間に東洋一の大ロープウェイを架けるという無粋極まる計画だった。当時はやった「活性化」という経済効果を理由に、着工へのプロセスが順順と進められ、大新聞は戦わずしてシャッポを脱いでいた

▽「ご安心下さい」。小松門主の決起に小新聞の記者であった私が確信し、一人の会社経営者が動いた。識者の良心の声を集めた報道が宗教界や京都経済界に届けられた。市長と市議会宛の5万人の署名が国を動かし、大原は歴史的風土特別保存地区に指定され計画は白紙撤回された

▽かけがえのない将来世代への景観を護ったのは、大新聞でも、テレビ局でもない。思いを一つにして団結した一握りの人々の断固たる決意と行動であった。永続的未来を共創する獅子よ、我等も「汝の良心に忠実なれ」の旗の下に決起しょうではないか!

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