第32号(2017年2月10日)

フランスの大文豪ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』。表題の意味は「悲惨なる人々」である。貧困のため一片のパンを盗み監獄に入れられた少年ジャン・ヴァルジャンが脱獄したところから、生涯「罪」を背負った彼の人生が始まる。

教会の牧師との出会いで悔い改めたジャン・ヴァルジャンはその後世間的な成功を収めるが、彼の過去の罪を執拗に追い続ける警部ジャヴェールの発見するところとなり逮捕・脱獄の繰り返しで「罪」はどんどん大きくなる。しかし、美しき魂のジャン・ヴァルジャンは生涯、自分に赦しと愛を与えてくれた牧師の愛を原点に生きる。彼のヒューマニズムは、二十一世紀の我々にも深い感動を与える。

一方、パン泥棒に端を発するジャン・ヴァルジャンの「罪」を許さないと「正義」の炎を燃やし続けてきたジャヴェールは入水自殺を遂げる。それは、人間的な愛に生ききったジャン・ヴァルジャンの勝利でもあった。

新約聖書のヨハネ伝にこんな逸話がある。律法主義者が姦淫の現場を押さえられた女をイエスの前に連れて来て律法による処罰を求めた。「罪無き者はこの女を石で打て」。誰一人打つことができなかった。イエス自身も。

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