第31号(2016年1月21日)

易に「霜を履(ふ)んで堅水(けんぴよう)至る」という卦がある。今は霜だけれど、次に氷が張り詰める厳冬が必ず来るという警告である。易は人間生活の移り変わりを四季(四時)になぞらえる東洋の智慧だ。

戦後日本の経済成長路線の最大のプロデューサーは世界の電通だろう。その足下に霜が降り始めた。電通女性新入社員の過労自殺の労災認定をきっかけに、東京労働局による大がかりな臨検が行われた。電通の神通力が落ち始めたのではないか。

かつて京都大原の三千院と比叡山中の横川中堂を結ぶ東洋一のロープウェイ架橋計画があった。山に動物園を、大原盆地に多目的ホールとスポーツ施設を建てる一大観光プロジェクトである。自然と歴史的景観を破壊する暴挙を企画立案したのが電通であった。結果として頓挫したが、記者が自宅を訪ねてコメントを求めた林屋辰三郎氏(歴史学者)は、戦後日本の環境破壊の元凶として、電通を厳しく批判していた。

福島第一の原発事故にもTPP報道にも及び腰の大新聞とテレビマスコミの背後で電通が蟠踞(ばんきょ)しているであろうことは容易に想像がつく。しかし、驕れる者は久しからず。大マスコミは電通とこのまま無理心中するのだろうか。

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