第29号(2016年7月30日)

間もなく「終戦の日」がやってくる。1945年8月15日。しかし本当は「敗戦の日」ではないのかという議論がある。米英中ソ4カ国に対してポツダム宣言(無条件降伏)を受諾した旨を天皇自ら日本国民に伝えた日。

大宅壮一編、半藤一利著『日本のいちばん長い日』には、一億玉砕を唱える阿南惟幾陸将に対して東郷茂徳外相が戦況に鑑みて本土決戦で勝てる保証はないと主張し、天皇の「聖断」によって戦勝の終結を決めた場面が生々しく描かれている。それまで「神州不滅」を煽ってきたマスコミは「敗戦」ならぬ「終戦」という表現で綻びを繕い通してきた。

西暦663年、白村江の戦いで任那日本府は滅んだが、唐・新羅連合軍の侵攻を免れ、二度の元寇も台風に救われた日本。明治維新後、日清・日露戦争に勝ち、第一次世界大戦でも戦勝国になって驕慢その極に達した。

結局「不敗の神国」は瓦解。天皇は「現人神」から「人間」に戻る。「敗戦の日」の翌年1月1日、昭和天皇は「天皇ヲ以テ現御神」としてきた「架空なる観念」を捨てて人間宣言をされた。それは、この国で生活する民衆と天皇が”侵すべからざる神という虚構への滅私奉公”から共に解放された祝詞でもあった。

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