第24号(2015年6月22日)
霊性プームと言われる。近代の羅針盤であった理性と感性だけでは現代の逼塞状況を突破する力になの得ないがゆえに霊性人間を求める言説が高まってきた。「霊性」と一貫して向き合ってきた鎌田東二教授と、公共する哲学の金泰昌博士との対談が実現した。日本的霊性とハン的霊性の出会いである。
お二人が日本神話の素戔嗚尊に実存的親近感を抱いていることが分かった。高天原を追放されたスサノオは、出雲の地で八岐大蛇を知略と豪腕によって退治し、美しきクシチダ姫と結ばれて「八雲立つ……」のあの有名な歌を詠み、地上に正義と平和を運ぶ英雄となる。しかし、八岐大蛇は本当に死んだのか?と金氏が間いかけた。
その後、鎌田氏が制作に携わった映画「久高オデッセイ」を観る機会があった。日本の原郷として、沖縄本島の東に位置する久高島の神事を追う。貴重なエネルギー源である、十年ぶりのウミへビ猟の場面は鮮烈だ。“大漁”であった。
一方、同じへビでも人間を不幸にする八岐大蛇の方は福島原発メルトダウン事故を境に、東アジアを分断する巨大な百岐大蛇となって息を吹きかえしてはいないか。現代のスサノオが連帯して魔軍と戦う行動哲学を共創できれば本望である。