第16号(2013年12月31日)

伊東俊太郎氏は新装版『比較文明』(東京大学出版会)において、「『ルネサンス』はあくまで西欧の出来事であるといってよい面があるが、『科学革命』は全世界史的な意味をもつ」と指摘している。二一世紀の人類が考えるべき重要な視座である。

▽ルネサンスは西欧における「人間」の復権であり、それまでの神との隷属的契約関係から独立した「自我」の存在宣言であった。しかし自我が地球環境問題や経済グローバリズムの暴走等で自信がゆらぎ、ニーチェが予言したニヒリズムがのっぴきならない哲学的難問となってきた。

▽アジアにおいて、西洋のルネサンスに相当する人間復興はあったのだろうか。結論から言うと、アジアには西洋の「契約」に代わって「道」や「徳」という倫理が説かれてきたが、その根拠を提供してきたのは西欧の「神」ならぬ「支配者」であった。西欧において「神は死んだ」が、アジアの支配者は今も君臨し続けている。本紙が追究している論語の新解釈は、その意味でアジアのルネサンスの走りとなるかもしれない。

▽科学革命は従来、ルネサンスや宗教改革と同列に西欧で論じられてきたが、実は産業革命の「力」を伴って世界を覆っている。今後、その「科学」が問われる。

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