第7号(2012年12月17日)

岩崎宏美の「マドンナたちのララバイ」は戦後経済成長の第一線で働いてきた団塊の世代の心に浸みた。早朝に家を出て職場で必死に働き安酒で傷を癒して夜遅く帰宅する。まるで母子家庭。戦時中の銃後の守りのようだった

▽武器を持って戦う戦争は終結したけれど、物の豊かさを求める経済戦争という別の戦争に明け暮れた日本はアメリカに次ぐ経済大国へと奇跡の成長と遂げた。現在はデフレギャップで世界一の富裕国になっているにもかかわらず震災の被災者にさえお金が流れないという奇妙な「不景気」に自信を失っている。日本は駄目な国なのだろうか

▽女優でユネスコ・アジア文化センター顧問の中野良子さん。彼女が子どもの頃、年の暮れには一家で餅をついた。つきたてのモチを細長く伸ばし、薄く切った「ホトプレモチ」は、子供たちの一年分のおやつになった。おばあさんは固くなったモチを朝から温かい胸に入れて暖め、子どもが帰ってくる頃には柔らいモチに戻っていた

▽中野さんがおばあさんのホトプレモチの心で講演をすると、どの国でも話がスッと通じるという。「日本人が忘れていたのはホトプレモチだった」と気づいた。「思いやり」は、世界に誇れる日本の心ではないだろうか。

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